「Ex-(エクス)フリー・デ・トマコマイ」で夜更けのロックフィッシング



※全話一覧は コチラ



「これは世界救済の話ではない!異世界『釣り中心思考』な主人公の、成長記録である。」
※ここから世界構造が露呈していきます。


プロローグ:釣り人A…事故による転生から18年が経過…


前世で「狂犬」と呼ばれていた俺は、謎の災厄により砕け散って死亡した。

「職業:冒険者」「属性:釣り人」というステータスを与えられ、無力なモブキャラ釣り人Aとして、この「小さな釣り冒険の世界」へ転移してきたのだった。

ヘタクソな釣り初心者として、ノープランで気のむくまま、ニコニコ超非効率なレベルアップに励む日々。

そして月日は流れ……、効率を削ぎ落し(気分優先)、超科学的アプロ―チャーとして、封印都市と化した街に現れた。


暗い星空と孤独な釣りの開始 


西暦2025年9月4日、午前3時
ザザー…ザザー…
北方の大陸にある荒廃したディストピア
封印都市 「Ex-(エクス)フリー・デ・トマコマイ」

ひゅるり
海辺で、俺は一人ゆるい出し風に吹かれ、漆黒の海面を見つめる。

足の裏で感じるマントルの対流、そしてプレートのひずみ…

視覚と体で拾った情報。

「気温17.0℃ 北風2.8m/s 気圧 潮位」

並列意思がそれらを解析し、意識空間に投影する。

「うんうん……整っているな」

――これらの行為は、
「念のため、天体(フィールド)の内側から見とくか」
という、釣りという作品の構成パーツを点検する作業だ。

夜空を見上げると、今日は星が見えるが、月は見当たらない。


立体イメージ補正情報:夜空の死角に潜む月と太陽


足元の砂を一つまみ指先にのせ、観察する。

「どれどれ、砂質は…火山岩由来の砂鉄が混じっているな」

サラ…サラ……と爪弾き、地面に落ちる様を眺める。

「Please wait 0.01 seconds(0.01秒お待ちください)」
…解析中…ピピ…74%…ウィーン…

砂粒の質量と落下速度を解析する。
地球の重力に影響する引力の方向を推定し、光の到達時間から、月と太陽の位置を特定。

それらを基に、潮汐力と海水の体積、波のウネリをデータコード化する。

「精度は98.3%といったところか」


「属性:釣り人」の精度限界


「確率98.3%」
この精度には、宇宙の普遍的な現象も織り込んでいる。
不確定要素の「1.7%」を排除することは、「属性:釣り人」の俺には、不可能。

だが…、(あるいは俺なら)、一瞬よぎった思考を打ち消す。

…ふっ、(まったく)

釣りに関係ないことは、考えるもめんどうなことさ。

今の俺はただのモブキャラなのだからな。
そして、微かに煌めく波間に視線を向ける。


深淵を覗く:存在感知の異能


「存在感知の異能」
その空間に存在する、あらゆる鼓動を感じ取り、感覚と感情の流れを汲み取る能力。

感知した獲物の情報を解析データに重ね、意識空間のデータホログラムに立体投影する。

「ふむ、沈み根の陰、アジトにエリアボスがいるな。
距離…7m 水深3.48m、
潮汐による魚の活性と心拍数、ルアーの特性を考慮すると
――捕獲まで53秒か」


データ解析とルアーへの伝達


ヴゥゥーン ツーツツ―
ラインを低く唸らせ、思念を振動に変換する。

ターゲットの位置情報と、アクションのイメージを、魔ルアーであるディーノ(肉厚ボディ細いピンテールのワーム)に伝える。

「はいはい」……(振動で言わなくても口頭で聞こえるわよ)

ディーノはあきれた様子で首をふりながら、ラインの先に結んだジグヘッドを、その身にまとう。

「いつでもいけるわ、準備OKよ」


大空からの撃投〜超科学的な襲撃(釣り)


「それじゃあ、いくか」
釣り人Aは、その場で大きく息を吸い、深く屈みこむ…。

「ダンッ!」ズザァァ…

大地を蹴り、砂埃を巻き上げ、砂鉄の雨を降らせながら天高く跳躍し、「パチンッ」と指を鳴らす。

かかとに跳躍力を55倍に増幅させるバネを仕込んだ、このダイナミック・ジャンピングキャストのためだけに開発した長靴(超科学的釣り具)の実証実験は大成功だ。

このキャストの利点は、通常では困難なルアーに重力をのせて発射させられることだけであり、海面への入水角度を見誤ると…、
衝撃でルアーが四散する危険な技である。

空間認知と緻密な分析力を要し、物理的破壊力のある技だが、想定される使いどころはない。

…相手が通常の魚で、海面に結界が張られていなければ…、のはなしだが


ダイナミック・ジャンピングキャスト:海面を防護する結界の存在


背中のリュックに収納していたパラシュート(釣り具)を開く。

ゆっくりと降下しながら遥か下の暗い海面目掛け「ふんふん、ふ〜ん、さあ、情熱的に踊れっ!ダイナミック・ジャンピングキャスト」と叫び、ロッドの先で円を描く。

ヒューン……、「ガツンッ!」

硬質な衝撃音と共に、ピキピキピキ パリーン!、…ぶくぶく。

海面を防護する「見えざる結界」は脆く砕け、計算通りの入水角度でルアーが沈下していく。


エリアボスクロソイ(デザート)40cmとの対峙とディーノの変貌

2025/9/4 苫小牧クロソイ40cm

「ふぅ、まいっちゃうわね、まったく、
一歩間違ったら爆散するところだったわ」

無理やり上空から海中に放り込まれたディーノ。
上司の突飛なハラスメント行為に若干憤りつつも、マッタリと海底へ沈下する。

「いたわ…アイツね」

指示通りに、エリアボス40cmクロソイの眼前を、トボけた顔で通過する。

(…着水から9秒)

ぴらぴらとテールをなびかせ、上からノコノコやってきたベイト。
興味を示したボスが、口先で軽くコツっと突いた瞬間。

ギロリとした視線がエリアボスを射抜いた。
――背ビレに寒気が走る。

「くくく…、残念だったわね。たった今から、ここの生態系の頂点は、
ワームであるこのワ・タ・シ、ディーノ様よ!」

自身を狙っていたクロソイの方へ向き直ると、ベロリと舌を出す。

狡猾な捕食者の形相で、ぶるりとテールを震わせ、低く重い声色で「—― あつく情熱的な抱擁 ――」と呪文を唱える。

パアァァ
思惑が具現化した禁忌な文字列が、妖艶なマテリアルボディに浮かび上がり光を放つ。


魔ルアー第二形態「バトルディーノ」


潮が引くように、弛んだお腹周りがみるみると引き締まり、強者の風格(オーラ)を纏ったバキバキの腹筋を顕現させる。

メロンのような力強い肩周りから、血管の浮き出た丸太のような両腕を生やし、ニヤリと口角をあげる。

「あら、とってもおいしそうな獲物(デザート)ねぇ、捕まえて…、食べちゃおうかしら」

驚愕し、唖然と立ち尽くすエリアボスに顔を寄せると、調理前の食材を、品定めするような顔つきで、目を細めいとおしそうに舌舐めずりする。


暗い海中、怪物が放つ『波動』と『声』に怯えるプランクトン


「…通常の釣りに於いて魚に警戒心を抱かせるのはタブーであるッ!
だが…、魔ルアーであるディーノはッ!、
生まれついての圧倒的な強者であり捕食者なのだッ!」

暗い海中のアジトでは海藻だけがゆらめく。
突如現れた異形の怪物が放つ『波動』と『声』に魚類も甲殻類もプランクトンですら、恐怖に凍り付き、怯えて岩影に身を潜めた。


欲望のギアをあげた魔ルアーの滾り


真っ暗な夜の海岸で、波の音にまじり微かな鼻歌が聞こえる…。

「ふんふふーん ふんふん」

無事着地に成功し、いそいそとパラシュートを畳む釣り人A。
ロッドを握る手に伝わってくる海中の様子を伺いながら、片膝をつき、髪を掻きあげ呟く。

「ほう、ディーノのやつ、最近ご無沙汰だったから随分滾ってるようだな。
ま…予想とおりの展開だが」

――海中で、ディーノの動きが一瞬、とまる。
今の呟きは、全部聞こえていた。

ディーノ:(……うわぁまただ。俺なんでも知ってる感だしちゃってキモ)

――ディーノの心の声も、釣り人Aに丸聞こえだった。
……釣り人Aの鼻歌が、ピタリととまった。

ズガーン!ひゅんひゅん、ボボボッ、ドカーン。

パワーと欲望のギアをあげたディーノは、情熱的なステップで、ダンスを舞うように派手に暴れまわっている。


エリアボスとの激闘


狂戦士バーサーカーと化したエリアボス。
鞭のようにしなる強烈な尾びれによる連撃を放つが、ディーノは全て掻い潜る。

そして、懐に潜り込むと、
丸太のような両手でガッシリ顔を掴む。

「では、(ニコリ)いただきます。 ぶちゅーっ」
(唇を奪い相手の戦意を奪う精神に大ダメージを与えるプロレス技)

ぷるっ
ぷるうぅん

激しいリップロックで、相手の精気を吸引し、お肌にハリとうるおいを宿す。

「なかなか活きがいい魚ね、プリプリと身が締まっているじゃない」

密着した状態から魚体の滑りを逆手に取り、瞬時にヌルっと流れるように背後へ周りこむ。

そして、スリーパーホールドで一気に搾り上げる。

(…着水から25秒)


激戦の結末

正気を失ったソイの戦士。

「グウゥルァッー」
唸り声を上げ潜水し、必死の抵抗を試みるも、ヌルリヌルリ巧みに締め上げ、「絶対捕食者」が、圧倒的な動きで制圧し、心を抉りとる。

(…着水から41秒)

頃合いをみて、組み技を解いたディーノが、「デイイィーッ!」
助走をつけた、渾身の串刺し式フロントハイ・リップロックを顔面に放ち、畳みかけるようにスイング式変形リバース・リップロック。

勢いを乗せて、貪るように唇を叩きつけると、ソイの戦士は完全に抵抗意欲を失い…。

「ふぅ…お腹いっぱい、ごちそうさま」

ぷるんぷるんっと艶めくもち肌となったディーノが満腹宣言。

これで、53秒の攻防は静かに幕を閉じたかに思えた……が…


この世界への違和感と蠢く陰謀の影


「ひひ…」うじゅるうじゅる ジ…ジー…。

「監視対象ノ行動ヲ記録:強制転送プロトコル起動、システムニデータ転送」
…ジ…ジー「ひ…ひひ…」

ソイの体表に寄生していた「システム管理者の黒い蟲」
この蟲は世界を監視する目…。

時を同じく、揺れる波間。

微かな月の吐息に包まれた、謎の隠れ巨乳で色白のメガネっ子は、ふわりとスカートの裾を揺らし、遠くを見つめ呟く。

「ふっ…ふふっ……長靴を纏い大空より、
透き通るようなやわらかい鼻歌とともに現れる…
やっぱりぼうやは、古の伝説…晴天の霹靂を呼ぶもの…
落雷の狂犬 メシアだったのね」

汐風がそよぎ、波が静かに砂浜を撫で…夜空に流れ星が瞬く。

並列意思は、寡黙に視覚と五感で得た情報を分析し、未来を見つめる。
果たして、この異世界で感じる不気味な違和感の正体とはなんなのか…。

静かに寄せる波の音…ザザー「…ケテ…タスケテ..デアリマス…」

キュイーン「…Please wait 0.01 seconds(0.01秒お待ちください)」…
…解析中… …解析中… …

夜明け前のディストピア、封印都市の水面下では、新たな闇が蠢きだすのであった。

2025/9/4 苫小牧 クロソイ体表の黒い寄生虫

蠢く謎の寄生虫:「世界を監視する目…システム管理者の黒い蟲」


※次回のエピソードは コチラ


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